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部活動の地域移行に関して~経験から考えること~

教育の視点
Photo by himawariin on 写真AC

ニュースでも取り上げられる機会が増え、一般的な認知がされるように

2022/06/07 NHKラジオ第一 マイあさ けさの聞きたい 内田良氏 出演部分を出勤途中で聞いておりまして、今回の記事にしました。

 部活動と教員の働き方改革として、「部活動の地域移行」が議論されていることは、もうすでに様々なメディアで目に、耳にしていることと思います。

 個人の率直な感想としては、『ついに現実になるのか』です。もちろんこの話題は、ここ最近でメディアで取り上げられる回数が増えただけであって、私が聞いただけでも20年以上前からあったものです。それが、今、先生が多忙を極めているという認識とともに、国民を巻き込んでの議論になっている。ここを起点にして、改革に向かわずして、いつやるのかという印象です。

 部活動指導がネックとなって、中学校・高等学校教員になることを拒否する学生も現実的に存在します。部活動の有無でなくとも、職業としての”先生”を希望する学生は減っている現状、包括的に変えるべきが山積する中、改革ができるところから進めねば、すべてその”つけ”は後世に行ってしまうのではという懸念を抱いています。現実的に、後世に課題として回ってきた結果、今の議論につながっているわけですから。

スポーツ庁の有識者会議と提言案発表、実行となるか

今回の記事の、参照元は以下のサイトです。

 https://www.mext.go.jp/sports/b_menu/shingi/035_index/index.html

  上記リンク:スポーツ庁 運動部活動の地域移行に関する検討会議 資料より

https://www.mext.go.jp/sports/content/20220606-spt_oripara01-000023182_01.pdf 

  上記リンク:運動部活動の地域移行に関する検討会議提言の概要 

 

有識者会議の実行と、2022年の6月には検討会議提言が取りまとめられました。

資料から、部活動指導を希望する教員も想定した提言があることがわかります。

具体的な部分は、資料をご確認ください。

 

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私が経験したこと、今後地域移行によって現場で変わると考えられること

 部活動に関して、運動部を2年半というわずかな期間ではありますが、主顧問・副顧問として経験した身としては、暗黙の了解の元、他の先生はみんなやっている、拒否権なし、選択権なし、土日なし、賃金は発生するが指導時間が一定時間を超えないと発生なし、などさまざまな側面がある部活動を制度として改革することは、個人としては受け入れられるものです。

 中学校に初めて勤務することがわかったときには、部活動が生徒の自主的な活動に基づくものであるという位置付けから、顧問拒否ができるのかどうかについて検索しまくりました。そして、拒否は非常にハードルが高いものであること、断固拒否をしたとすると、その学校における他の教員からの印象や扱いは望まないものになる可能性が高まることがわかりました。結果、部活動はやるしかないのだという結論に至り、引き受けて指導を行いました。

 それによって担った部活動関連業務を簡単に紹介していきます。

 担当してからその多さに驚いたのですが、顧問だからという理由で生徒・保護者が当たり前のようにやってもらえる、またはやってもらっていたものが以下です。

  • 練習メニューは考えるもの
  • 技術的指導はするもの
  • 練習試合は一か月に最低一回は組むもの
  • 練習試合ができるように、他校の顧問にはたらきかけをするもの
  • 土日は基本的にやるもの
  • 試合用のユニフォームのカタログを取り寄せ、選択、意見聴取の機会を設け、全員が納得 するものを用意するもの
  • 大会参加に当たって、協会加入の必要があれば、その加入申請、管理をするもの
  • 道具の買い替えに関して、試用期間を設けるために用品店と協力するもの
  • 保護者会を運営して、部活動の実施や練習試合の送迎の係決め等運営方針を策定、通知、 議論の場を設けるものなど、

 これは以前の顧問が習慣的に実施していたことです。以前の顧問も、聞くところによると自身が考えてやった部分もありますが、ご自身もそうしてきた経緯があるので受け継いだとのことでした。そして、この受け継いだ項目は、私はこう考えるからこう変えていきたいと行動することで、部内がギクシャクするきっかけとなり得るのです。

 ギクシャクの元凶は、変化後の内容如何ではありません。

 ”変化することそのものに対する不満”が出てくるのです。

 やはり、今まで当たり前であり、慣れていたことが変わることは、社会においてもすぐに受け入れられず不安や不満が出てくるものですね。

(例えば、レジ袋の有料化に伴うレジ袋の購入やエコバック持参運動:すんなりと受け入れることができたでしょうか、また当時受け入れられたでしょうか)

 生徒も同じです。社会においても、段階的に実施することがよくあるように、2年生であれば、たった一年であっても経験してきたことを変えるには、理解と行動が伴うのに時間がかかります。3年生ともなれば、2年間行ってきたことを引退までの半年間だけ違うことになる。これは、それだけで不満や反発が出ます。

 結果、そこに配慮をして、顧問になったのだからと一方的な考えで行うのではなく、生徒の意見を聞き、自分の考えを述べ、どうしていきたいのかという話し合いの場を持ち、徐々に変えていきました。また、保護者には練習試合の送迎等で顔を合わせるときに話をしたりと、そちらにも気を使いました。

 以上が私が体験した部活動に関連した業務内容です。生徒の意見を聞いて運営していくという点は、部活動に限ったことではありませんが、部活動を担当したことで行う必要の出た業務であり、休日練習においても行ったため紹介しました。

 さて、前置きが長くなりましたが、今回の検討会議によって、休日から段階的に地域移行となっていく。これだけでも、上記で紹介したような多くの部活動関連業務が減ると考えます。

 部活動以外にも、日々の教科指導や学級指導、時期によっては試験、行事準備があり、休日に出勤しないと間に合わない業務(平日には部活動はまだあり、他にも業務があるという観点から)はあります。

よって、先生方の休日が完全に休みになるとは限らないです。

(この多忙解消のための制度改革も早急に望まれます)

 ですが、部活指導が終わったあとに残務を行い、結果ほぼ一日出勤といったことが解消され、午前中にやって、午後は休めるように変わることは、非常に大きな変化だと捉えます。単に部活動のために、休日出勤当たり前の解消が期待されます。この変化に加えて、私が望んでいる点があります。

 それは、完全な自由意志で、希望して参加する先生と参加しない先生の意見尊重がなされることです。具体的には、生徒がいるのだから参加するのが当たり前、参加しない先生は”ダメだ”といった、同調圧力がはたらかないことです。

 

課題は多々多々多々ある

 教員視点では、部活動をやるにしてもやらないにしても希望を取り入れてもらえる状況ができるということで、利点は双方にあると思います。まず休日から実施ということに、一部を変えただけでは無駄という意見ではなく、これを機に、より制度としてどうあるべきかを詰めていくことが、健全な議論と実施になるのではないかと私は考えています。

ですが、休日以降から平日も含めた完全移行ができるかというと、それはまだ先の話となりそうです。

 細かく決めるべきが多い中、一番のネックは”人員”と”費用”だと思います。自治体として、人口が多いところでは、団体の数、活動する人(有資格である、経験年数も長いなど)の数も多く、指導を担う受け皿が多いかと思います。結果、複数名で指導に当たることができ、指導機会も増やすことができる。一方で、地方では、当該人員がおらず、受け皿がない可能性が高くなります。また、受け皿の有無に関わらず、部活動指導員に対して報酬の支払いが生じる場合、その活動費用が問題となります。

 となれば、人・場所・機会・費用が多いところと、そうでないところの差は必ず生じます

 それが影響する場面、例えば高校入試が考えられます。差は、大会における活躍度に関わり、それが調査書に記載されるとなれば、均等に扱われて公平に評価される土壌がなければ、格差につながります(いわゆる部活動推薦の枠がどうなっていくのかという点)。また、入試においても面接時に、生徒が中学時代の活動を話す際、話した内容が環境に恵まれ参加できた部活動と希望しても指導員がおらず土日に活動をしてこなかった部活動のことを均等に評価していけるのか。

 もちろん上記以外に、学校と部活動指導員の間に生じる、責任・運営管理・情報共有についても明確にしていかないと、結局指導を担う人物がおらず、今まで通り教員の仕事となる可能性も多分にあります。

現実的に練習場所が学校となれば、そこに教員がいる必要があるのか、ないのかについては今後、どうなっていくのかは定かではありません。また、実際に部活動指導員を希望されている方の中には、練習場所として校庭等の開放であると、学校は開いていない状況で、もし部活動指導中に事故が起きた場合、一人のときに対処することは不安であるし、それならば引き受けられないという意見もあります。

 地域移行を実施していく中で、学校運営などに影響が出てくる部分はやはり同時に変容させていくことが望まれます。

休日に部活動を地域移行、その部分だけを見てしまうと、移行後の影響によって生じる不利益を被るのは生徒です。今後平日も含めて地域移行という考えがある現状を考えると、やはり今話題に上っているからこそ、じゃぁこれはどうなるんだという多様な視点からの意見が必要になるのではないでしょうか。まだまだ、教員にとって「休日に部活がなくなるってよ、やったね。」と、素直にすべて受け入れて喜べる段階にはありません。

これからも注視していきたい内容です。

 

おわりに

 私の意見とは異なる意見をお持ちになる方も多いはずです。多様な意見がある中、どの意見が優れている、劣っているかではなく、どれが教員や生徒・保護者に納得されて運用していけるのか。意見や想いを発信して、議論していきながら充実した教育活動や学校生活につながることを願います。

 今、変化に向けて活動が起こっている最中ですから、これが立ち消えにならず、先生方の自己犠牲によって成り立つ慣習を打破する結果になっていくことを願います。

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