親の関わりが子に現れる傾向に影響する
学校で勤める中で気付いた様々な子の特徴があります。
①不登校傾向 ②友人関係の構築 ③コミュニケーション能力 ④学力 ⑤左記に関わるような性格
もちろんそこには、子自身の生まれ持った特徴が関係しています。しかし中には、この子はなるべくしてこのような状態になってしまったのだろうなと感じる子もいます。
それは、やはり家庭環境、つまり両親の関わり方が大きく影響しています。母親か父親のどちらかというわけではなく、そこはやはり両親なのです。
この記事では、私が学校に勤務する中で気付いた、親子関係の傾向を記述していきます。
最初に明確に断りを入れておきますが、あくまでも私個人の経験で得た感覚であることをご承知おきください。
傾向1 ヘリコプターペアレント(主として母親の関わりが強い)
ヘリコプターペアレント((ヘリコプターペアレント:上空を旋回するヘリコプターのように、子供のそばで常に監視・管理を行い、何かある毎にすぐに干渉し続ける親のこと。))は、昨今で有名になった言葉です。いわゆる過保護と呼ばれてきた親です。
とにかく、児童・生徒自身が考え、行動する場面で過干渉が見られる。例として、学校の支度・準備から始まり、塾に通う通わない、進路決定や実現に向けての行動など本来生徒自身が自己決定をし行動する必要がある場面で、必ず干渉を行う。それ以外についても、日々の生活について常に口を出し、その子は言う通りに動くだけになっていきます。
結果的に、思春期前からこれらは日常化するため、その子は自ら考えることをやめていきます。
親はというと、継続してつくられてきた考えない習慣を省みず、責任はその子に押し付けていきます。子が無気力や思う通りにならないと、その状態に腹を立て、さらに口うるさくなっていく。子はそれにうんざりし、関係が崩れていきます。どうにもならなくなったところで、親が危機と感じ、周囲にいろいろと相談をする。基本的な関わり方は変わらないため、相談された先生なども、どうにもできないことが多く、親はそれにまた腹を立てて、関係悪化を広げていく。もう一方の親は、基本的に干渉をほとんどしません(多くの場合は、父親。そして、過干渉を放置していることも多い。もしくは気付いてすらいない。)。それがゆえに、状況はどんどん悪化の一途になりやすいです。
ここまで読んでお気づきかと思いますが、親が自身の行動を振り返り、気付き、変えていくことをしない限りは解決の糸口は見えません。
<必要な対処>
親自身に我慢をしてもらうことです。なかなかこれができずにここまで来ているので、今まで子に費やした時間を自身の時間にしたりなど、いったん関わりを手放し、自身が我慢することで変わったことによって、子が変わっていく様子を感じてもらうようにしています。
傾向2 片親かつ多忙による、関わり不足
片親(私が関わった子は、ほぼ母親のみ)の場合、日々、自身とその子が暮らす糧を得るべく長時間労働を行っています。これは、あくまでも関わった家庭での傾向ですが、看護・介護・教育の関わる方々の子に多く見られます。やはり、我が子以外に大事にしなければならない人があり、その人々を相手に仕事を行っている。それゆえに、長時間化が当たり前になっているといった印象が強いです。そして、やはりその子に問題が現れてから行動を開始されることが多く、大変な状況になりやすいです。
日々、忙しくする中で子に接するがあまり、「早くしなさい、もう出かけちゃうから」「仕事だから」「疲れている」など、子への関わり方が一元的になりやすく、子も本来親にやってもらうような衣食住に関わることも、自身で行う必要が出てきます。自立の心が芽生えることもありますが、親の代わりとなる場面もあり、甘えたくともできないがゆえに、問題を起こすことで注目を浴びさせるような場面を作ったりもします。
<必要な対処>
片親がゆえに、子の要望を丁寧に聞き取り、希望を叶えるための具体策を話し合いが乏しい。ならば、その部分を仲立ちし、共に考え、行動のサポートをしていくと、その子が行動しやすくなります。本来、親がその関わりをすべきところができないので、その部分を汲み取って関わっていくことで、変容を促していくと変化を感じやすいです。
傾向3 両親が勉強をせずに、子との関わりがうまくいかない
すべての親に当てはまるわけではありませんが、やはり「親になる」が意識されると行動は変わるものと思います。我が子が生まれるまでに、あれをした方がいい、これはだめ、こうしておくといいなど、書籍などを用いて、予習をする方もあると思います。そうでなくとも、自身の両親に聞いたり、すでに子をもつ友人に聞くなどの行動をすることが多いはずです。
ですが、その意識が薄いと、子は子、私は私であるとし、親としての適切な関わり方ができていない場合があります。一見すると、子を一個人として認めているかのようですが、親としての関わりがしっかりとあってこそ、自我の確立や、子が自信を持てたりなどの成長が促されるものと私は考えています。
学校に入る前に、その関わりが薄いがために、他者との関わり方がわからず、うまくいかず、学校での生活で悩みを持ちやすい傾向にあります。また、他の生徒と壁を感じてしまったり、馴染めなくなったりしてしまいます。放ってはおけませんから、状況を連絡し伝えたり、家庭での様子を聞きます。ですが、それでも尚、それは子の問題であり、親の問題ではないと取り扱わない。「家でも言ってみます」、「学校で声をかけてやってください」などの応答はあるも、相手側からの要望もなく、実際に家庭でどのような声掛けがなされているかもわかりません。
子もこちらが積極的に関わろうとするも、すでに関わり方に困惑があるため、こちらを避けるようにしたり、休みがちになってしまいます。そこで連絡をするも、電話では様子がわからないので問題が複雑になりやすいです。最終的には、こちらが関わることすら困難になっていってしまいます。
<必要な対処>
子の状況について、親が情報源となるため、親との関係づくりを重要視する。多くを話してもらい、こちらがどのように関わることができるかを引き出し、それを的確に実行していく。子と直接やり取りができなくとも、親を介しいろいろと提供していくことで、親が子と関わる機会を作り、考えの変容を促していくことが必要となります。
親が自己都合に飲まれると、子は疲弊していく
上記の私が経験した傾向にある生徒に見られる特徴として、SNS上で自己表現をするようになり、知らない人々とネット上だけで繋がっていく場合が多いことが挙げられます。
自己実現し、それに反応し認めてくれる場がSNS上では容易に起こるからです。そして、そこに関わってくる人間の悪意のあるなしは関係ありません。その生徒にとっては、そこが居場所になってしまうのです。悪意があってもなくてもその人に依存しやすくなってしまうのです。
情報リテラシーが高ければ、SNS上のみでのやりとりで終われます。しかし、満たされる場が提供されてしまうと、その高い意識すらも越えてしまい、個人情報を出したり、会ってしまったりが起き得ます。
ここに至るすべてとは言い切れませんが、多くの部分はその親に関係が深いです。親が自分の都合で(止むに止まれぬ事情もあるでしょう)子に関わる、または関われないことで、子は自己を安定させていくことに力を使ってしまい、学習やその他の行動すらできない状態になってしまいます。
それは傍から見れば無気力です。しかし、それは生徒自身の怠惰ではないということも視点としてもつべきです。
さいごに 我が子、その生徒にどう関わるか
<親視点>
上記に記述してきたように、親自身が考え方を改め、我が子への関わり方を意識的に変える以外に方法はありません。とはいえ、急に気付いて改めてるのではなく、我が子と対話が必要です。子の考えや意見に耳を傾け、自身の行動を振り返り、共有した上で行動に移っていただきたいと思います。それは子への宣言ともなります。
行動を変えること、変えたら継続していくことで我が子との関係を良い方向にもっていってほしい。時間がかかって今に至っている分、同じくらいもしくは一層の時間をかけてでも変えていく覚悟をもってもらいたい。
<教員視点>
その生徒が話をしてくれる状態作りをした後に、聞き出していくことも日々の指導に加えてほしいです。根本がどこかを知ることで、どの関わり方が適切か考えることができるはずです。日々の忙しい最中ではありますが、上記の生徒は目立つはずです。他の生徒との関わり方であったり、欠席であったりと、「違うな」「変だな」と思う場面が出てくる、出てきているはずです。そこに適切に行動を起こし、関わりを持てる教員であってほしいです。学校でない場所に居場所を見つけ、対応ができなくなってしまう前に。
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