定期試験は先生も生徒も大変なもの
定期試験が近くなると、生徒(保護者も含め)は、「そろそろ定期試験かヤバイなぁ。嫌だなぁ。勉強しなきゃなぁ」と思い始めるかと思います。塾に通っていれば、成績アップのために、講師の先生がヒートアップしてくるでしょう。
一方、学校の先生は「あぁ、そろそろかつくらなきゃなぁ。どんなのにしようかなぁ」と考えだします。一学年の教科を複数の先生で担当している場合には、先生同士でまずは誰が作成するのかを決め、次にどんな内容にするのかをざっくりと話合います(多くの場合は、出してほしい内容を事前に作成担当の先生に伝えてつくってもらい、その後内容検討という流れが一般的かと思います)。
中には、選択解答式の問題を作成する際に、如何におもしろい内容を盛り込むかを考えるあまり、とてつもない時間を割く、私から見ると「ユーモアのある先生」もいらっしゃいます。
ともあれ、試験についてはつくる方も、させられる方も『気が重くなるもの』です。
というのは、必ず<試験は行われ><採点され点数が出てきて><成績となる>からです。
では、先生側の視点に立って定期試験を考えてみます。
定期試験で何を見取るのか
「生徒の学力以外に何があるの?」という声があると思います。
確かに、定期試験は日々の生徒の学習状況を見るために行われます。さらに、それを教えた先生が考えて課すわけですから、生徒の学力を計るものとなります。
ですが、これは『それを教えた教師』の考えや意図と、『それを教わった生徒』の理解が一致している前提の上で成り立ちます。つまり、教師が『こうだ』と思って行った授業内容は、生徒も同じ『こうだ』という理解がされているはずであるという前提があることを気付いて頂きたい。
この前提がズレていると、生徒の学力ではなく授業中の理解度を計るという別の役割も出てきます。このズレが、どの程度の生徒の中で生じているのかを見極める問題を課すことも必要です。
例えばどんなことがあるのでしょうか。
中学理科1年生の内容でいくと、質量と重さの違いがあります。
端的に言うと、質量は物質そのものの量(記号はgやKg)を表し、重さは物体に作用する重力の大きさ(記号はN〔100gを1Nと換算〕)を表します。
さて、教師としては言葉を説明するときには、図も含めてビジュアルで捉えるように促します。
質量は量ですから、どこにいってもその物質が変化しない限りは変わりません。図では、300gのリンゴと300gの分銅が上皿てんびんによって釣り合っている状態を表現します。
一方、重さは重力の大きさですから、地球では1でも重力が地球の約1/6の月ではリンゴを引く力が1/6になってしまうので、地球では3N(300g)でも、月では0.5N(50g)になってしまいます。これをばねばかりに吊るした図を使って表します。
さて、ここで教える側としては、単位も異なるし、測定する器具も異なるわけですから当然『「質量」と「重さ」は別物だ』として授業を行います。生徒にも、同じ理解がされるものと思っています。
ですが、生徒の頭の中では、物質そのものの重さと重力に引っ張られる力は同じであるという錯覚が起きることがあり、それで理解していまい教師のそれとズレが生じるのです。
このズレを確認するために、
質量と重さのちがいを物質そのものの量と重力という言葉を必ず用いて簡潔に答えなさい
といった問題を課して、理解度を計ることができます。
もし、クラス内で理解度が低ければ、テスト返しで確認をしたり、授業中に復習を何度か取り入れたりと、フィードバックが可能になるわけです。
よって、定期試験で見取るものは学力に限らず、生徒の正しい知識と理解。加えて、その理解度から授業へのフィードバックの有無をも含んでいるといえます。
見取りと作成と採点と集計と
ここでは、定期試験で見取りをするまたはした上でどのようなことを次に行うのかを述べていきます。
<見取りをする上での次なる手>
作成 作成については、例の最後で触れていますが、学力と正しい知識・理解を主とします。
それ以外に何を考えるかというと、クラスや学年内の誰に何点を取らせてあげられるかを考えます。これはとても重要です。
この想定する生徒は、いわゆるその教科を苦手としているか、全般的に勉強が苦手な生徒です。
私は多くの場合、このような生徒でも最低40点は取れる内容を目指していました。問題内容は、基礎中の基礎の問題です。苦手な生徒でも、復習をすればしっかりと答えることができる問題。もっと言うと、授業中にその生徒が解けていた問題を出題するようにしていました。
一方で、上位に入る生徒向けの問題も必ず入れています。入試問題やその類題などです。
このように必ず想定する生徒が決まっていれば、定期試験の内容の半分はできたようなものです。あとは、問題集から引っ張ってくるなどすれば、問題を考える労力は減少します。
採点 採点については、とにかく楽に採点ができることが優先事項です。
人数が多いですから、ミスを少なくしつつ採点するには、採点基準が明確かつ観点別・点数別になるように解答用紙を工夫します。
完璧に配置できないこともありますが、多くの場合は問題数が60~80問程度になっていたので、1~5点問題をつくり、採点をしやすいように配置していました。
採点時間の短縮とミスを減らすことは作成時に意識した方が多くの業務を回す中では優先度が高いと考えていました。
<見取りをした上での次なる手>
集計 最後に、これは多くの先生で行っているかと思いますが、採点で得られたデータは、エクセル上で生徒毎に観点別で集計しておきます。
また、クラス毎に各問題観点別の正答率を求め、どこの理解度が低いのか、授業で振り返るべき点はどれかをチェックします。
私は、これらのデータも加味した上で成績を付けていたので、成績を出す際にもこのデータは重宝しました。処理もエクセルの機能でさっとできるので便利です。
おわりに
さて今回は、定期試験について先生側に立って、何を想定して作成し、採点結果はどうするのかをお伝えしました。
定期試験が近づくと憂鬱になりますが、ポイントとなる見取るものを押さえ、想定生徒の点数で考えて作成するばエネルギーと時間を軽減できるかと思います。
データの集計も面倒に思うかもしれませんが、エクセルは一回作成するばあとはコピペで作業は楽になっていきます。
どこに時間をかけて、どこを楽にするのか、働き方改革は上からの指示待ちでは何も起きません。身の回りのできることから始めてみてはいかがでしょう。
定期試験のあれこれは、意外と工夫次第で時短できるものです。
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