細かい部分は、解説を行っている他のサイト様をご覧いただくとして
前回の記事、”教員採用選考試験の倍率低下対策”に関連する内容を記述していきたいと思います。
2023年度から2年ごとに9年間かけて、段階的に公務員の定年延長がなされ、65歳定年になる。
率直な感想は、学校としては人手不足解消の一助になる可能性がある。一方で、先生個人としては、はたらく時間と内容の調整が上手にできないと、精神的な負担が多くなることが予想されます。
よって、
『自らの行く末を考え、自分自身で人生設計をどうするのか』
組織に頼らず地頭で思考・判断する状況に強制的になるのだろうなと考えます。
そこで今回の記事では、現状では定年延長だけであり、それに関わる内容で、担任業務を担うのかどうかについてなどの情報がない中で、定年延長だけが取り入れられるのであればという前提のもと、定年延長者が現場に来ることで起こり得るメリットとデメリットについて、個人的な考えを述べたいと思います。
メリット そこまで多くない?
考えついたメリットは2点でした。
①単年度的な、人材不足の解消 ②経験を生かした若手の育成
①について
2年ごとに定年延長がなされるので、定年延長がなされた年度は、採用選考倍率の低下で、教員確保に苦慮する自治体にとっては、人材不足解消の可能性があります。
該当する先生が、定年延長(採用定員に含まれる)か、それとも再任用(採用定員に含まれない)のどちらが多く選択されるかにもよりますが、採用人数の枠が狭まるので、教員採用選考の倍率が高まります。それによって、厳しい選考を通過した方が先生になり、いわゆる質の確保につながるわけです。
②について
現場では、若手の育成は課題です。
現在、教える方も教わる方も自身の目の前の仕事に追われています。特に若手は忙しい中でも、自らの資質能力をいち早く伸ばしていく必要があります。初任者は指導役の先生がおり、研修の機会も多くありますが、いわゆる非常勤や臨時職員の先生は、指導役もおらず研修の機会が乏しい。その先生方も含め、経験者としてサポートを行う機会の増加が期待されます。
デメリット 意外と多く出てくる 解決するのは、本人?若手?
思いつく事柄が2つありました。
数は2つですが、その内容に付随する事柄が、懸念として出てきました。必ず起こるわけではありませんが、解決に向けては定年延長される方々の意識が強く関係するように思えます。
一番の懸念材料はこれです。やはり、管理職視点で直近まで仕事をしていたわけですから、なかなか現場の感覚を戻すのは、ひとそれぞれではありますが難しいことであるように思えます。
なかでも担任業務があるかどうかは大きいように思えます。特に小学校や特別支援学校では、体力も求められる部分があります。加えて担任業務で考えれば、保護者対応が懸念されるひとつです。
現在は、担任がとても気を遣って学級だよりや電話応対を通して保護者対応をしている印象を受けますが、管理職や学年主任などの肩書をもって対応する場合と担任として対応する場合では、大きな差があります。保護者としても、自分の子どもの担任の先生として見るわけですから、校長先生でしたとか過去はどうでもいいのです。
また、授業のやり方も変化しています。GIGAスクール構想によって、デジタル端末を利用した教育がなされる機会が増えました。ご自身で設定するなど、当たり前のように使ってこられた方はよいですが、そうでない方が担任になり、その必要性が出たという段階で学び直すことが、多忙を極める中で可能なのか。
わからないから紙で授業実施する。
他の教室の先生との差が出てきてしまい、子どもからもその差に不満が出るといったことも起こり得るかもしれません。
そして、感情的な部分として、これだけのことを求められて給料は今までの7割です。とはいえ、60歳時点での7割なのでそこまで低い金額ではないはずですが、やはり減った事実を受け止めるのはなかなか難しい印象があります。
いうなれば、負担が増えて給料が減っているわけです。モチベーションを保てるのか、精神的に安定していけるのかという点に疑問を持たざるを得ません。
うまくいかなかった場合、対応をするのは他の教員や管理職です。実際にその状況に遭遇、対応した先生方が、将来ご自身の身の振り方についてどのように考えるでしょうか。
こちらは、出てくるものによってデメリットとなるものです。
2023年度から2年ごとに9年かけて定年が延長されていき65歳定年になります。
この移行期間において、メリットで挙げた事柄が大きく学校の運営や改革に寄与し、日本の教育にとって好循環を生み出す結果であれば、何もいうことはなく。世間的にも受け入れられるし、教員を目指す人々を増やす結果にもなるはずです。
ですが、一方でデメリットで挙げた事柄が多く聞かれるようになると、これは現状をさらに悪化させることになってしまいます。
採用選考倍率は減る。採用人数は増えない、現場の負担が増える。管理職希望者が減る。これらの報道を見た、教員志望者が減る。負のサイクルです。
今後65歳の定年を迎えるまでにどうするか~自らの教員人生を俯瞰する~
ここで主体となるのが誰かといえば、定年延長の判断をする当事者たちです。
そして、その意識です。
すでに60歳定年を選択と固く決意されておならばよいのですが、迷いがある。この迷いを断ち切り、先を見据え、現場を見て何をしていこうかと考え、行動材料にするのであれば、きっとメリットで挙げた活躍をしていただけるのではないかと。
しかし、ご自身の体力や教員としてのスキルなど今まで積み上げてきたことの棚卸と現場で求められることとのギャップを把握し、そのすり合わせをしていけない方々は、まだ我が子が学生だからとか、家のローンがといった自己都合だけを考えての定年延長を選択し、現場に戻ると思いがけないつまずきがあるかもしれません。
結果的に周囲を巻き込みますが、一番は延長を選択された先生自身が大変な思いをされることになります。
また、別の視点では定年延長された方は採用枠内での続行となります。採用選考試験に関連させ、採用枠の増加は現時点ではこの定年延長には伴わないので、採用選考試験に情熱を持って望む人々の枠を減らすことにもなり、他の先生方の負担を増やす結果となるやもしれません。
教育に学校にと、情熱をもって取り組んでこられたからこそ、管理職という立場をご経験されたり、定年まで勤め上げるに至ると思います。
ですから、そもそも私の懸念などまったくの無駄な妄想である。そうなることを強く願います。
9年後は定年が延長された状態が当たり前になります。定年の延長など考える年齢でなくとも、定年が延長されることを見据えて、自身の教員人生をどう終えたいか、そこに考えを巡らせておくことも必要になってきそうです。
おわりに
この定年延長や教員採用選考試験改革は、外堀の変化です。同時かつ先行する形で、内部である教員が置かれている環境改善が重要であると言えます。すでに変化はやってきていますが、まだ実感を伴って変わった、良くなったとは言えません。
様々な変化に翻弄される形となりますが、定年に関して判断する主体は私も含め当事者たちにあります。
どんな判断であるにせよ、目の前の子どもたちの未来を想像し、教員として最後まで情熱をもって勤めたいものです。
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