変えようという気持ちはわかる
以前の記事で、採用選考試験における倍率の低下とそれに関わる物事について述べました(以下、参照ください)。
その後調べていく中で、
優れた人材確保のための教師の採用等の基本的考え方 1 資料2
(文部科学省ホームページより)〔以下、”考え方”で表記〕
を見つけました。
この資料は、2021年の資料である点からも、文部科学省において、教員採用選考試験とその倍率に関わる懸念というものを調査し、把握すると共にその解決に向けた動きを行っていることがわかります。また、資料の中では、教員の採用倍率の低下についてどういったやり方で解決をするかを様々な視点で方向性を探っています。
ただ、その主な論点について、私の勝手な変換ですが、
「教員になりたい人が減っている・・・よし、教員数を増やすために、教員になるためのルートを増やせばいいじゃないか!」
という中身であり、その教員の確保先となるのが、すでに社会人となった人々です。
おそらく、これを知った多くの教員は、「ツッコミ」を入れるのではないかと思います。
出てきそうなツッコミ(意見)としては
『働き方については、通達を出したりとやった感がすでにあり、解決に向かっているし、解決するということ?』
『部活動の地域移行についても指針を出しているし、今後の予定も決まっているので、さらに何かをするつもりはないと?』
『免許を取得しながらも、教員になりたかったがなれず、民間に就職した人が一定数いて、その人材を掘り起こすことは大事。学生が教職過程にありながらも、現場を学び教員としての人生を歩む道筋をつけることも大事。でも、その前に、変えるべきは”今”の先生たちの状況ですよね?』
『内情を変えていないのに、外堀だけ埋めてもそれは教員をやろうという意欲に繋がらないですよね?』
『報道を含めて、これまで教員についてのネガティブキャンペーン目白押しで、どうして教員になるルートが増えたというだけで教員やるぞ!という人が増えるのか?』
などなど、いろいろと意見が出てきそうです。
個人的な考えですが、
予想される顛末が、教員採用選考試験の受験者数の増加は一定数あった。しかし、学生らにとっては、教員採用選考試験はあくまでも民間への就職活動の一貫に組み込まれるだけ。
すでに民間に就職した人々は、すでに今の職を捨ててまで、厳しい意見や状況が多くある教員の道に進もうという段階にないので、そこまで希望者は増えない。
もうひとつ問題をはらむのは、教員採用選考試験が滑り止めになる可能性もあるということです。その滑り止めで教員になる人物を現場に入れることによる対策が、入職後の研修機会の充実のみで、教育を担う人物育成として有効な手立てとなるのか。
一方で、今まで教員を目指すも、夢叶わず民間へ行ったが熱意はまだ冷めない人たち。高い専門性を身に付け、自身が身に付けてきたことを通して、未来の人材育成をしたい人たち。
多様な社会で生きてきた人が入ることによる現場の転換の期待など、どう変化するか、どう良くなるかは未知数ではありますが、変わるであろうことに利点を見出すことはできそうです。
”考え方”に関連して触れられていないこと
ですが、やはりここで明確に出てこないのが、
すでに先生として仕事をしていながらも、非常勤や臨時的任用になっている先生方の扱いをどうするのかという点。
資料では、”人物重視の多面的な採用選考”で、”過去の一定期間を通じた実績に基づく丁寧な受験者評価を行うことは、人物重視の多面的な採用選考の観点から有効”という記述から、非常勤や臨時的任用の先生方が採用されやすくなるのかという考えも浮かびますが、すでに各都道府県で臨時経験者枠はあるので、枠を増やす等の変化がともなわければ、結局、外から教員となる人を増やそうという考えであり、すでに中にいる人たちはすでに『教員』であるから、その増やす人としてカウントしていないという見方もできてしまいます。
しかしながら、教員採用選考試験の受験者数には、非常勤や臨時の先生方もカウントされているはずです。それを含めないとするならば、希望者数の減少は一層深刻な状況です。それを以て外部からの教員候補を発掘したいという論理であれば、教員数増加のためそういった方法も実施していくのですねとなりますが、どうもその記述は私が見た限りではありません。
であるならば、予算を増やして、正規の教員数を増やすことを前提とすることでないかぎり、
この”考え方”は、「これから教員になろうという人は、ぜひそのまま気持ちを変えずに教員になってくださいね。なれるルートを確保するから。でも、働く環境や給与面は、まだ道半ばなので待遇は保証しないけど。」
というメッセージと捉えられてしまわないでしょうか。これは勘ぐりすぎでしょうか。
おわりに
教員採用選考試験の倍率低下に見る危機感があり、その対策を行っているということにおいて、実際に教員の不足を感じることもあるので、今回のことはその解決につながるのではと、一定の安心感はあります。ただ、ただ・・・・なのです。
“考え方”の中にある一文、”教育・教職に対する熱意を有する優れた人材の確保に資する教員採用選考の在り方について、今後さらに検討を深めてはどうか”について、長年立場が不安定でありながらも教員であり続け、かつ教員採用選考試験を受け続ける先生方が視野に入っているのかどうか。
それとも、経験があるのだから、採用選考で採用とならないのは自己責任とし、扱うことをしないのかと疑念が出てきてしまいます。
また、場合によっては、これから民間企業から教員を希望する方々も、採用選考試験に挑むも合格せず、同じように臨時職員となって、質の高い教育を行っているが、非常勤・臨時職員であり、生活が安定しないといった状況にということもありえないでしょうか。
そして、もし外部の方々の採用率が高くなるとすれば、すでに非常勤・臨時で先生をされている方々の採用はより厳しいものにしかならないのではないでしょうか。
そうでなくとも、受験時期の早期化と受験ルートの複線化が教員の確保策として有効な手立てとなるのかどうか。もちろんこういったものはやってみないと、その実はわからないとは思います。しかし、その前にやることがあるのでは・・・と思ってしまいます。
今後も注視していきたい話題です。
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